チア☆ダン ~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~

「出来っこない!? 笑われたってやってやるし!」
実話を元にした映画の1つで、福井の高校に通う女子高生達が、チアダンスで全米優勝した実話を映画化。

小説版

サウンドトラックブルーレイ 通常版ブルーレイ 豪華版きみど莉央が描く漫画版
チア☆ダン (少コミフラワーコミックス)

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ストーリー

ごく普通の女子高生、友永ひかりはサッカー部に所属する孝介を応援する目的でチアダンス部に入部するが、そんな彼女を待つのは「チアダンス部は全米を制覇する」と口にする鬼教師の早乙女と、ダンス未経験の部員達だった。

ダンスの才能は皆無で、笑顔だけが取得のひかり。
横浜からやって来た優等生で、ダンス経験ありの数少ない生徒、彩乃。
クールで無表情な一匹狼、唯。
バレエ経験ありのわがままなお嬢様、麗華。
お調子者でぶりっ子女子のあゆみ。
複雑な家庭環境に悩むぽっちゃり系女子、多恵子。
このあたしらで、福井から世界を目指す!?

登場人物

チアダンス部

元々はバトン部だったが、早乙女の意見によりチアダンス部と改名された。
チアダンス未経験者の集まりだったが、最終的には実力を身につけ、アメリカで優勝する。

友永ひかり

本作の主人公で、笑顔だけが取得の女子高生。孝介を応援する目的でチアダンス部に入るが、仲間と共に全米制覇を目指すことになってしまう。
お調子者で周りを見ない事もあるが、最終的にはチアダンスの才能を身につけていく。

玉置彩乃

横浜からやって来たダンス経験者。チアダンス部の部長となる。

紀藤唯

ヒップホップが得意な一匹狼。他者に心を開こうとしない。
実は重い過去がある*1

東多恵子

太めの体型*2とは裏腹にキレのある動きを見せるが、内気で人前で話すのが苦手。
実は複雑な家庭環境に悩んでおり、母親とも仲が悪い。

永井あゆみ

アイドル系のダンスを踊るぶりっ子女子。お調子者だが、やる気は人一倍ある*3
普段は眼鏡をかけているが、踊りの時は外している*4

村上麗華

バレエが得意なお嬢様だが、チアダンスのレベルは低い。
高飛車で非常にわがままな性格。それ故にメンバーに辛く当たる。最終的にはチアダンスをまともに踊れなかったため、嫌気をさしてチアダンス部を退部するが、JETSが全米大会に出ていた事実を知ってからは、今までひかり達を見下した事を反省するが、強気な態度は変わってない。

早乙女薫子

チアダンス部の鬼教師。「地獄に落ちなさい!」が口癖。

ひかりを取り巻く人物

山下孝介

サッカー部に所属する男子高生。ひかりとは中学時代からの同級生。

矢代浩

彩乃に一筋な男子高生。諦めきれない性格。実は大きな夢を持っている。

入部で地獄に落ちる!

ひかりがチアダンス部に入部すると決意したのは、中学時代からの同級生だった孝介を応援するため。しかし、彼女の妄想はあっという間に打ち砕かれた。
それは、チアダンス部の鬼教師、早乙女が「チアダンス部は全米を制覇します!」と口にした事と、それを果たす為に守らなければならない掟「恋愛は禁止、おでこ全開」等も言い放つ。当然違反すれば地獄に落とされる。

そもそもチアダンスとは何か。ひかりは疑問を抱く。
チアダンスとは4つの踊り*5の組み合わせで出来たパフォーマンスで、2.5分の競技。
規定時間内でダンスの技術やチームワーク、チアスピリットなどを競い、競技者の笑顔や迫力ある演技によって見る人を元気付ける他、競技者自身も元気になれるエンターテイメント性の高いスポーツでもあった。

しかし、チアダンス部にいる生徒は、ほとんどダンス未経験の素人。中にはバレエを習っていた麗華、ヒップホップを得意とする唯、チアダンス経験ありの彩乃もいた。
チアダンス経験ありの彩乃は部長として、みんなを支えていく立場となり、ひかりは彼女との出会いでチアダンスを学んでいくが…。

チアダンスで大失敗! 出来っこないこと、やってやるし!

初めてのチアダンスでハプニングが起きた。
なんと、みんなの息が合わず、イージーミスを連発していた。当然、観客にも笑われる始末。

「これで分かったでしょう? 自分たちの実力が💢!」

大失敗を犯した事で、当然一行は早乙女の怒りを買う。チアダンス部に嫌気をさした麗華はひかり達の元から去り、同時に唯、多恵子もその場から去って行った。

次の日、心がバラバラになった事に責任を感じた彩乃。部活に参加しているのは彼女とひかり、あゆみだけ。
この3人では、当然チアダンスなんて出来ない。
ひかりは彩乃と共に、唯達を探して説得する事にした。

唯を探した2人。そこで母親から唯の過去を知る事となる。実は彼女は中学時代、不登校を繰り返していた。
その為、他者に心を開こうとしなかったのだ。
唯を見つけた2人は、自ら「ずっと1人だった」と語り、一緒に多恵子を説得するため、同行する。

次に多恵子の家に向かった一行だが、彼女は母親と対立していた。実は多恵子の家庭環境は複雑で、当の本人も苦労人であった。そのため、母親とは仲が悪く、時には対立もしていた。
多恵子も内気な自分と決別するため、チアダンス部に戻ると決意する。

そして麗華の家に向かうも、当の本人はチアダンス部に嫌気をさし、「あんたらは、一生福井地獄にいろや」と一蹴した。当然麗華は、チアダンス部に復帰すらしないだろう。

麗華の一言に流石のひかりも我慢ならなかったのか、「出来っこないこと、やってやるし!」と小声で言う。
そして…。

「絶対アメリカに行ってやるでのー!!」

と叫ぶのであった。

JETS結成!

唯、多恵子を説得した事ですれ違いも解決したひかり達は、校長室に向かう。そこには早乙女もいた。
会話によれば、チアダンス部をバトン部に戻そうとしていたとの事だが、当の早乙女は「大きな夢を与えたい」と…。

「チアダンス部のみんなは、初めて出来た友達なんです…。」

先に説得し始めたのは、一匹狼の唯だった。
唯に続いて多恵子、彩乃達も自分の気持ちを言い放つ。

「チアダンス、続けさせて下さい!」

何とか廃部を避けたい一心で、ひかりはこう言った。

「あたしら、アメリカで優勝します!」

彼女の言葉にチアダンス部の継続は決まった。

「あなた、自分からアメリカに行くと言ってたわね」
「言いすぎました💦」

チアダンス部の廃部は回避できたが、ひかりは調子に乗って言い過ぎたことに後悔する。
しかし、早乙女は嬉しそうで…。

「その言葉を待っていたのよ! JETS!これが私達のチーム名です。」
「高校3年間は短い!だから、ジェット機のように世界に羽ばたく!」

チアダンスのチーム名が決まった。その名もJETS。
高校3年間は短い。だからジェット機のように世界に羽ばたく。3年間でとんでもない所に行ってやる、出来っこないことをやってやろう。

ライバル、超えなければならない壁の存在

チアダンスで実力をつけてきたひかり達。そんな彼女達を待つのは、全米王者のチーム、レイヴンだった。
アメリカで待っていると言う彼女達の発言に、ひかり達は自分たちの実力はまだまだだったと痛感する。

それに気づいた一行は厳しい練習に耐え、後輩達にも厳しく接するようになる。ただ1人ひかりは「楽しくやりたい」と不満を漏らすが、彩乃に「楽をしてると、目標は絶対に達成しない」と注意された。
楽しくやるだけでは、目標を達成することなんてとても出来ない。ひかりはそれを、未だに理解できないでいた。

全治2ヶ月の怪我。前みたいに踊れない!

3年になったひかりは、全治2ヶ月の怪我を負っていた。
当然、チアダンスなんてまともに踊ることも出来ない。

怪我も治り、ひかりもチアダンスに参加するも、踊る力はかなり失われていた。そこを早乙女に注意されたひかりは、彼女の厳しい指導に耐え切れず、夢ノートに「あんな大人にはならない!」と不満を書き込んでしまう。

1人落ち込むひかりに、孝介がやってきた。孝介は夢を叶える為に必死に努力したが、全国大会に出られないまま引退に終わったと言う。しかし、当の孝介に後悔の色はなく、今度は自分がひかりを応援すると語った。
孝介の言葉に、ひかりは1人チアダンスを踊る。あたしも、アメリカで踊りたい一心で…。

前みたいに踊れるようになったひかり。幸いにも全米大会に間に合い、JETSはアメリカに旅立った。

センターの交代

全米大会には他の国から来た高校生達も来ていた。全米優勝をするには、ライバル達に勝たなければならない。
そこで早乙女は…。

「ひかり、センターに入りなさい。彩乃と交代します」

早乙女の衝撃発言。それは、センターを部長の彩乃ではなく、ひかりに交代する事だった。
それに疑問を抱いたひかりは、彩乃が所持していた夢ノートを見る。
ページを1度破っていたが、再びテープで修正していた。実はセンターから外された悔しさで、彩乃は1度ページを破っていたのだ。
彩乃の気持ちを知ったひかりは、なぜ自分がセンターで踊らなければならないかと疑問を抱き、つい「先生を軽蔑する」と言ってしまう。
でも、早乙女は早乙女だった。

その後、ひかりは大野コーチから早乙女の意外な本心を知る。
実は早乙女自身も、自分自身を超えようとしていた。一見厳しいスパルタ教師だが、実は涙脆い性格。
大野コーチの言葉にひかりは、自分自身も変わらなければならない事に気づく。

決戦を控えた夜。

「私、センターから外されて凄く悔しかった。でも、ひかりがいつか、端っこでもセンターのつもりで踊るって言ってたの。ごめんね。みんな、ダメな部長で」
「そんなこと思っている奴、ここには誰一人もいないよ」

彩乃は「自分がダメだから、センターから外された」とみんなに言うが、誰一人も彩乃を冷やかした者はいなかった。
もちろん、それはひかりも同じだった。
何かを目指して本気になれば、深く傷ついたり落ち込む事もある。肝心の自分は、その覚悟がなかった。

でも、迷っている暇はない。全米大会で優勝し、全米を制覇すること。
ひかりだけじゃない。それは、チアダンス部みんなが、その気持ちを持っている。

ひかりはみんなに、こう言った。

「あたし、センターで踊る!」

頂点に立つ者だけが見える風景

勝戦。自分達よりも先にパフォーマンスを見せたレイヴン。彼女達のパフォーマンスも素晴らしかった。
でもJETS達も、負けてはいられない。

「これが、みんなで踊る最後のチアダンスやよ」
「あたしらは、全てをかけてやって来たんやで。最後の最高の舞台で、輝いてまおっさ!」

3年生達は卒業したらバラバラになるが、ここでいい思い出になる事は変わらない。

「明るく、素直に、美しく!レッツゴー、JETS!」

JETSはステージに立ち、踊り出した。

「さすがは日本人。揃えるのだけは上手い」

アイドル好きのぶりっ子女子、あゆみは当初目立ちたがり屋でお調子者だったが、今の彼女は本物のアイドルのように輝いていた。
次に多恵子も、キレのある動きを見せる。太った体格が災いして、「踊りに相応しくない体型」とアメリカ人に注目された多恵子だが、複雑な家庭環境に乗り越え、母親と対立しながらも頑張り続けた*6
高校には、多恵子を応援する弟達がいる。

唯は重い過去もあって、他者に心を開こうとしなかったが、今は笑顔を見せ、ヒップホップもカッコよく決めている。
チアダンスの楽しさをみんなに教えた彩乃。センターから外された悔しさをこらえ、笑顔で得意とするチアダンスを完璧に踊った。

途中で衣装チェンジ*7。JETSだけじゃなく、みんなが盛り上がる。
高校には孝介、彩乃に一筋な矢代、ひかりの父親、多恵子の弟達、校長先生達もフィーバー状態だ。
その背後には、チアダンス部をやめた麗華の姿もあった*8

チアダンスを踊り終えた直後、ひかりはようやく、早乙女が言っていた「頂点に立つ者しか見えない風景」を見る。
そんな中、ひかりは早乙女がいないことに気づき…。

全米制覇の瞬間

ひかりは1人で、早乙女を探し続ける。

「見えました。頂点に立つ者しか見えない風景が」

それでも早乙女は、ひかりの方に振り返らない。
その理由は、当の本人は涙を流していたからだった。

「何でもう泣いているんですか? 地獄に落ちてしまうよ…」

ついに結果発表。

「ワールドチャンピオンは、JETS!」

JETSは全米大会で優勝し、全米制覇を成し遂げた。
優勝したJETS一行は、ひかりと早乙女がいる場所に向かって、走り続けた。
大半の者は涙を流していた。悔し涙ではなく、感動して涙を流していた。

あれから数年後

JETSが全米を制覇して数年が経った*9。彩乃はキャビンアテンダントとなっていた。実は彩乃、キャビンアテンダントになると言う明確な夢*10を持っていて、それを見事に叶えたのだ。
そんな彼女と偶然すれ違ったパイロットの男性。彼は彩乃に一筋な男子生徒、矢代だった。
彼もパイロットになる夢を、見事に叶えたのだろう。

一方ひかりは、早乙女と共に高校にいた。今度は教師として。早乙女の後継者として、JETSを鍛えている。
孝介も教師となり、サッカー部の顧問として、部員を鍛えていた。

残りのメンバーはどうなったのか?
映画では一切触れてないが、唯はアメリカでヒップホップを踊るストリートダンサーとなった。
多恵子は複雑な家庭環境を乗り越え、子供たちを守る児童福祉司となる。あゆみは年上の男性と結婚し、一児の母親となった*11

ひかり一行が全米を制覇して9年後、別のチアダンス部が本気を出す。
それが、ドラマ「チア☆ダン」である。

ドラマ版の前編の小説。

*1:小説版より。

*2:それが災いして決勝戦の時、審査員に「踊りに相応しくない体型の人がいた」と言われた事もある。

*3:チアダンスの大失敗で心がバラバラになっても、チアダンスをサボっていなかった。

*4:早乙女に「眼鏡禁止」と言われた為。

*5:ポンダンス、ジャズ、ヒップホップ、ラインダンス

*6:踊りに支障がなかった事で、隣にいた女性に「踊りに相応しくないと言ってたの誰かしら?」と言われた。

*7:セパレートタイプの衣装チェンジした。

*8:最後まで和解しなかったが、小説版では「福井地獄にいろ」と一行を見下した事に関して反省している様子が伺える。

*9:小説版では卒業式がエピローグとなっており、本編と異なる結末で終わった。

*10:実は夢ノートにも、それが書かれていた。

*11:小説版で判明。