「水の都の護神」*1は劇場版ポケットモンスターの映画作品で、無印版最後の映画。
イタリアのヴェネツィアをモデルにした街「アルトマーレ」を舞台に、サトシがその街の守り神ラティアスとラティオスと共に、心の雫を付け狙う怪盗姉妹ザンナーとリオンに立ち向かう。
- 謎の少女
- 謎の少女、再び
- 少女の向かった先
- 夢幻兄妹
- アルトマーレの伝説
- 怪盗姉妹ザンナーとリオン
- 心を鬼に
- みんなを助けに!
- 数々の妨害
- 古代装置、暴走
- 津波
- ラティオスの最期
- 新たな雫
- カノン?
- 余談
- 外部リンク
謎の少女
水の都アルトマーレにやって来たサトシは、街の一大イベントである水上レースに参加していた。
昼間、アルトマーレを観光していたサトシは、水場で一言も喋らない不思議な少女と出会う。彼女がその場から立ち去ろうとすると、怪しい2人の女性がエーフィとアリアドスを連れて少女を捕まえてしまった。そこをサトシが助け出し、彼女と共に逃げだすが、途中で少女とはぐれてしまった。
彼女はどこに行ってしまったのか?
街に現れた怪しい女性たちは心の雫を付け狙う怪盗姉妹、ザンナーとリオンで、盗みの世界ではナンバーワンと言われていた。
彼女達はアルトマーレに忍び込み、心の雫の手掛かりとなる少女を追っていたのだ。
謎の少女、再び
ボンゴレに案内され、大聖堂にやって来たサトシ。そこで彼は絵を描いていた少女を見て、以前ザンナーとリオンに捕まった彼女ではないかと確信するが、当の本人はサトシの事を知らなかったのだ。疑問を抱いたサトシに、先程絵を描いていた少女に瓜二つな彼女が現れ、手招きしながらサトシを導く。
彼女はサトシをどこへ導くつもりだろうか?ある壁にたどり着いたサトシ。少女はその壁にすり抜け、サトシも彼女の後を追うことに。
少女の向かった先
その壁を超えた向こうには、そう簡単には入れない秘密の庭があった。
サトシは突然現れた少女を見つけるも、突風が襲い掛かる。ピカチュウは必死に戦うも、透明状態の相手に攻撃が通じず傷ついてしまう。危機一髪に陥ったサトシとピカチュウだが、少女が彼らを護ろうと立ちはだかった事で透明の正体が明らかとなった。
夢幻兄妹
その正体はアルトマーレの守り神の片割れ、ラティオスだった。彼は秘密の庭を無断で侵入したサトシを不審者と警戒し、追い払おうとしていた。
少女の説得に応じず、サトシに対する警戒心を強めるラティオス。
実は少女に導かれてやって来た秘密の庭園は、一般の人は入ってはいけない場所だったのだ。そうとは知らずサトシは少女の後を追って庭園に入ったため、ラティオスは不審者と警戒していたのである。同時に絵描きの少女カノンも現れ、サトシを庭園に忍び込んだ不審な人物と警戒するが、以前アルトマーレのガイドをしていた老人、ボンゴレの発言により、カノンに瓜二つな少女はラティアスである事が判明*2。 彼女はザンナーとリオンに追われた所をサトシに救われて以来、彼に好意を抱くようになり、自分たちがいる秘密の庭に導いていたのだった。サトシを心正しき人間と認めたラティオスは傷ついたピカチュウを気遣い、遊びに付き合ったり水の景色を見せていた。その後、サトシはボンゴレからアルトマーレの伝説や、心の雫の秘密をボンゴレとカノンから聞かされる。
アルトマーレの伝説
彼がラティアスに導かれてやってきた秘密の庭園は、ラティオスとラティアスをもてなすためにボンゴレの一族が管理しているもので、この庭園の噴水の中には「心の雫」が収められていた。
アルトマーレには先祖たちにより作られた雫とラティオスたちを使うことで発動する強力な防衛システムが存在するので、悪しき者に利用されないよう秘密にしていたのである。それと同時にサトシを気に入ったラティアスの悪戯で落とされたサトシだが、間一髪ラティオスに救出された。
サトシが秘密の庭園を後にした時、謎のカメラが無邪気に飛び回る夢幻兄妹を隠し撮っていた…。
怪盗姉妹ザンナーとリオン
みんなが寝静まった夜、街を飛び越えていく2人の怪盗姉妹。
姉のザンナーはツインロールの金髪が特徴の女性、妹のリオンは前髪を揃えたショートカットの銀髪が特徴の女性。
彼女達こそが心の雫を狙っていた怪盗姉妹で、最初はその手掛かりとなるラティアスを追っていた。
ロケット団の3人からすると、盗みの世界ではナンバーワンの実力者で、失敗もほとんどないらしい。
実は秘密の庭の入り口は2つ、もしくはそれ以上ある事が判明。サトシが入った入り口は最短の向かい側だったのに対し、怪盗姉妹は雫側から忍び込んだ。心の雫を奪えばこっちのもの。
だが、彼女達は雫を奪うだけではなく、アルトマーレの守り神とも言われた夢幻兄妹も捕まえようと画策していた。
2人が忍び込んだ事で眠りから覚めたラティアスとラティオスは、心の雫に手を出さないためにも怪盗姉妹に立ち向かうが、彼女達のポケモンに歯が立たず、ラティオスは捕まってしまった。自分が捕まっているにも関わらず、妹を必死に庇うラティオス。兄が傷つくの目の当たりにしたラティアスは悲鳴を上げるが、ラティオスは心を鬼にしてラティアスを説得しようとする。
心を鬼に
平和とは一転して窮地に陥る夢幻兄妹。ラティオスを捕らえたザンナーとリオンはラティアスに狙いを定めるが、彼女達に拘束された兄が妹を庇う。ザンナーとリオンは妹を助けるため自ら犠牲になったと察知し、エーフィのサイコキネシス*3、アリアドスの糸を吐く*4でラティオスを集中攻撃する。リンチに遭うラティオスを助けようとするラティアスだが、心を鬼にした兄に「サトシの所へ行け!!」と説得*5されてしまう。
決断を渋るラティアスにザンナーとリオンは彼女を捕まえようとするが、ラティオスに庇われた事でラティアスは難を逃れた。ザンナーとリオンは心の雫を奪い、ラティオスを連れ去らって大聖堂へ向かう。
カノン「心の雫が!」
ボンゴレ「なんという事じゃ!」
カノン「サトシ君が言っていた奴らの仕業だわ!」
心の雫がない事に気づいたカノンとボンゴレは、サトシがラティアスを拘束した彼女達の仕業だと察知し、大聖堂に向かうもエーフィとアリアドスの攻撃で気を失い、その隙にアリアドスの蜘蛛の巣で拘束されてしまった。
みんなを助けに!
街に逃げたラティアスはサトシがいる宿屋を見つけ、カノンに化けて*6サトシに兄を助けて欲しいと頼み込んだ。サトシは疑問を抱くも、彼女がここにいるのは心を鬼にした兄に庭園から逃げるように諭されたからだった。ラティアスがサトシに助けを求める一方で、大聖堂に囚われたラティオスは街の危機が迫っている事をサトシに伝えるため、夢写しを始める。
そこでサトシはカノンとボンゴレが大聖堂で捕まっている事と心の雫が悪用されている事実を知り、行動を開始。
数々の妨害
リオンの仕業でアルトマーレの街は次々と封鎖され、それによりカスミとタケシは宿屋から出られなくなるが、サトシとラティアスは間一髪外に出られた。
更にリオンは化石ポケモン、カブトプスとプテラを復活させてラティアスを捕まる事を指示する。
サトシはラティオスを助けるため、ゴンドラと水上レースで使ったボードを使って大聖堂に向かうが、その途中でカブトプスとプテラの執拗な妨害に遭ってしまう。そこでカスミとタケシのポケモンが援護した事で危機一髪から脱した。
しかし、古代装置は水を操る事もできた。
それを知ったリオンは大聖堂の前に辿り着いたサトシとラティアスを自身が操った水で苦しめるが、ラティアスの光で水は弾かれた。それと同時に古代装置のシステムがクラッシュ。これが決定打となり、古代装置は暴走してしまう。
古代装置、暴走
リオンが油断した直後に古代装置は暴走し、心の雫も美しい色から一変して醜い色へと変わっていた。
同時にラティオスもエネルギーを使われた事で体力もどんどん消耗していき、あちこちに感電傷が。サトシが蜘蛛の巣で拘束されたカノンとボンゴレを助ける一方でラティアスも、囚われたラティオスを助けようとするが、バリアに弾かれて助けられずにいた。
自身が囚われた上にエネルギーを吸収され、瀕死に陥るラティオス。
カノン「ラティオスが死んじゃう!」
カノンの言う通り、古代装置がこのまま暴走し続ければ、最悪ラティオスは絶命してしまう。
サトシは兄を助けようと必死になるラティアスを見て、ラティオスを助ければ古代装置の暴走は止まると確信し、彼を助けようとするもバリアに弾かれる。
そこでラティアスは自らの力でバリアを破壊し、ラティオスを助け出す事に成功する。幸いにもラティオスは無事だったが、ザンナーが変色した心の雫をうっかり触ってしまったことで雫は壊れてしまった。それによりザンナーはリオンがいる古代装置に突き飛ばされ、街の水は一気に無くなってしまった。
津波
心の雫が消滅したことで街の水が無くなった。それと同時に街の向こうから大津波が襲いかかってきた。
兄妹は意を決する。
古代装置と心の雫の悪用によるダメージで体力は限界を迎えつつも、妹に心配をかけさせまいと気丈に振る舞う兄。しかし、彼は死ぬ一歩手前。
次何か力を使えば、ラティオスは確実に絶命する。
「悪しき者が心の雫を使う時、心は汚れ、雫は消える。この島と共に」
津波はアルトマーレの近くに存在する巨大な図書館のある島を飲み込み、図書館は海の藻屑へと消えてしまう。
徐々に迫る津波。「街が沈む」と口にするボンゴレ。
このままではアルトマーレは津波に飲み込まれ、みんな死んでしまう。瞬間、ラティアスとラティオスは大津波に立ち向かい、光の球体となって津波に突っ込んだ。二匹の力で波は打ち砕かれ、辺りには再び潮が満ちた。
ラティオスの最期
しかし、津波を食い止められても光は消えない。一体何があったのかと疑問を抱くサトシ達。光の中でラティアスが見たのは、水のように透き通ったラティオスの姿だった。ラティオスはまるで別れのあいさつをするかのように手を差し出し、妹がそれに応えると、そのまま光の柱となって天に昇ってしまう。
彼女はその行動の意味を知り、落ち込む。2匹の活躍で海が元通りになり、アルトマーレの封鎖も無くなった。ラティアスを襲ったカブトプスとプテラも光となって、再び大聖堂へ封印された。
アルトマーレに住む人々は、この街で異変が起きた事を、最後まで気づかなかった。
新たな雫
早朝、サトシ一行はゴンドラで2匹を探す。海で発見されたのは、海ポケモンに保護されたラティアスだけだった。
ラティアスの無事が確認されたものの、ラティオスの姿が見当たらないことに疑問を抱くカノン。しかも保護されたラティアスも落ち込んでいた。
あの光は何だったのか……。一行が疑問視していると、ボンゴレは真実を話した。
「ラティオスが、命を懸けて街を救ってくれた」と。
街を救ってくれたラティオスは光とともに消え、もう帰ってこない。 アルトマーレを護る為に払った代償は、取り返しがつかない程大きかった。
あの光の正体は、ラティオスがこの星を飛び立つ際に放ったものであり、彼はアルトマーレを救ったことで命を落としてしまったのだ。兄を失った事にショックを受けるラティアスだが、彼が呼んでいる事を察知し、夢うつしで果てしない宇宙の闇の中に輝く地球が映し出された。地球はだんだん遠ざかり、失われたはずの心の雫はカノンの手に収まった。
彼女が持つ心の雫こそが、命を懸けて街を救ったラティオスが生まれ変わった存在だったのだ。
カノン?
ラティオスが心の雫として生まれ変わってしばらくした後、サトシ一行はアルトマーレを出港する船に乗っていた。その途中でカノンらしき少女がこちらに向かってきたのが見えたことで、船を止めてもらうことに。少女はサトシに1枚の絵を渡し、キスをして去って行った。カスミ「今のはカノン?それとも…ラティアス?」
サトシにキスをした少女は本物のカノンか、彼女に化けたラティアスかはサトシにしか知らない。
手にしたイラストは、サトシとピカチュウが一緒に描かれたものだった。
余談
ポケモンシリーズの映画では珍しく切ない結末で終わっている。
劇場版で鍵を握るポケモンが明確に死ぬのは本作が初だと思われがちだが、実は「セレビィ 時を超えた遭遇」と言う前例ががある。
セレビィはビシャスに捕まった事で洗脳され、彼の言いなりになって森を破壊するようになり、サトシとユキナリ*8達に襲い掛かったが、スイクンの力を借りた2人によってセレビィは洗脳から開放される。しかし、ビシャスが酷使した影響もあってセレビィの体は萎れてしまい、命を落としてしまう。セレビィの暴走で汚れた湖はスイクンの力で元に戻り、それを浸かるもセレビィは息を吹き返すことはなかった。
セレビィが絶命した事で一行は泣き崩れ、ユキナリは「セレビィは悪くない!なのにどうして死ななければならないんだ!」と森を破壊された怒りと悲しみをぶつける。
だが、時渡りでやって来た多数のセレビィにより蘇生。ユキナリを過去の世界に帰した。
また、ラティオスはDP189話「シンオウリーグ準決勝!ダークライ登場!!」でサトシと対決したトレーナー、タクト*9の手持ちとして登場。彼はダークライも手持ちに加えている。
ついでにこの2匹も劇場版で命を落としたが、ダークライは最終的に蘇生した。
本作の悪役ザンナーとリオンはラティオスを間接的に殺そうとした事から、前作のビシャスに続いてファンからの怒りを買いやすい典型的な悪役であるが、最終的に2人とも逮捕され、刑務所行きとなった。
尚、2005年*10に名古屋市のテ・ラ・ファンタジア内で開設した「ポケパーク2005」のアトラクション「アルトマーレの観光船」はバイキングタイプの絶叫マシーンであり、いたずら好きなラティアスとラティオスがゴンドラを急角度まで動かす。